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映画「同級生」

中村明日美子「同級生」の映画を観た。

 
 
原作(同級生・卒業生)は読破済み。ネタバレ配慮なし  以下感想
 
 
 
 
感想をまとめると「フィクションだと感じないくらい自然かつ、リアルなフィクション」。
映画の中身は原作に極めて忠実で、今観ているシーンが漫画のどのページのどのコマなのかがありありと、書き文字まで一つ一つ思い出せるくらい丁寧に描写されている。画的な部分で、ここまで精密に原作を再現しているところが良かった。
そしてこの映画を漫画としっかり差別化したものは「聴覚」だと思う。劇中で鳴る生活音も、音楽もあまりに現実と近くてリアルだった。
合唱練習の音のずれ、ズゴックのバンド演奏、ペットボトルのキャップが転がる音…… 映画のために作られた音というより、元からそこにあった音が聞こえてくるような印象を受けた。個人的にはバンド演奏のシーンがとても好き。
原作から音を丁寧に拾い上げるだけでなく、さらにオノマトペ的な効果音が加えられていて、それをアコースティックギターで作っていたところにもすごく共感が持てる。効果音および主題歌は押尾コータロー氏が手がけており、このように述べている。

主題歌だけでなく音作りに関してもまさにこの発言の通りで、アコギのノイズからきしむ心情が、澄んだ音から青春のまっすぐさが伝わってきて、この映画を「恋愛を写実的にうつしたもの」から「芸術作品」にしていたと思う。そういった意味では映画館で、できるだけ良い音響のもとで観てほしい。主題歌のボーカルがガリレオガリレイの人で、あの声こういう曲に似合ってるからほんと最高。
 
「聴覚」という点では、声優の演技も迫るものがあった。これは主役達だけではなくて、ガヤ一つ取ってもそう。作り物くささが無いとても自然な演技で、どのキャラクターも現実感を持っていた。この作品では佐条と草壁が頻繁にすれ違うので、頭で考えるより先に声が出るようなシーンも結構多い。特に神谷さんがそうだが、そういう心情が先行した声の演技がどの声優もとても上手かった。キャラクターを第三者として見るのが難しくて、2人がすれ違うたびに喉がひりひりした。
 
映画では季節ごとに章が分かれていて、出会いから1年後の夏までが描かれている。あくまで原作の同級生部分のみの映画。
 
 
雰囲気的には秒速五センチメートル的なものを感じる。切ない恋と甘酸っぱさと主題歌の浮遊感、景色の幻想的な美しさなど、共通する点は結構多いような気がした。たぶんああいう作風が好きな人なら初見でもそこそこ楽しめるんじゃないかな?
BLとはいっても純愛に近いのでそれほど違和感はないはず。ただ、ハラセンのシーンとか少しBL特有のご都合主義(にわかに信じがたいシチュエーション主義)がないわけではないので、そういうものが無理な人だとちょっと辛いかもしれない。PG-12だけどディープキスするくらいなのでそこまできつくもない。
 
漫画を読んだときよりも真に迫るものを感じた映画だった。キャラクターが動いて音が鳴るだけで、ここまで現実味ある出来事として感じられるんだなあと少し感嘆。知らない人にはいい映画なので観てほしいし、だめでも原作を読んでみてほしい、そんな作品だと思う。