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雑魚院生が書く、論文紹介初心者へのハウツーもどき

初めて論文紹介をしようとググったときに論文紹介指南の種類があまりないと感じていたので、研究室に入って何回か論文紹介をした中の雑感をまとめました。
特に最近は後輩にアドバイスをすることも出てきたので、そういう意味でも一度まとめておきたいと感じた。
なのでとってもとっても初歩的な話しかしないしできません。本当に初歩的な話しかできません。
就活の記事でも書きましたが、こういうものは内容の巧拙に関わらずたくさんサンプルがあったほうが良いと思うので、稚拙なものでも書いておきます。
あと、自分はバイオのウェット系M2なので、あんまりにも専門・学年などが違う場合は参考にならないかもしれません。無料の文章なので許してくれ。

そもそも論文紹介とはなにか?

ぐぐってみるとこんな感じで指南記事がちらほらでてくる。

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論文紹介をググってみた図
これらを見てみるとやはり定義とか心構えとかはラボによって割と差があるようです。気になる人はググって実際に見てみて。
ちなみに、ジャーナルクラブ、文献紹介という名前も聞きます(文献紹介は本の勉強会も含まれるのかもしれないが)。今回は以降も論文紹介という呼び方で通していきます。
まあそういうわけで、研究室・分野によってその細かな意味合いは違うようです。
少なくとも周囲の研究室では「最近出た論文から一つ選び、研究室のメンバーに論文の内容を説明する」という意味でやっているようです。例えばうちのラボはそうですね。



論文紹介の意義

私が考える論文紹介をやる意義、目的は以下です。

  • 発表そのものの練習として行う(発表慣れのために行う)
    • 研究室に入ると学会発表、自身の研究発表・論文発表などの発表を避けられないケースが多いです。ゼミでも自分の研究進捗発表をするので、発表の練習機会がないわけではないですが、論文紹介をすることで発表の試行回数自体を増やすことができます。
    • 進捗発表に比べると、論文という一つの形式にまとまっているものを紹介するという意味で論文紹介はフォーマルな対外発表により近いものがあると思います。
  • 論文を読む練習として行う
    • 論文を漫然と読むのではなく、効率的に読み取る練習になります(発表という形でアウトプットしないといけないから)。
    • 特に研究室に入った直後に発表という責任感をもって論文を読み、周囲からアドバイスを受けることは、自分に向いている読み方を見つけるのに役立つと思います。
    • また、単純に論文の探し方がわかるようになります。
  • 論理的思考を鍛えるために行う
    • 発表ではその論文を知らない人に向けて、どんな課題があって何によって解決されたのか、何が証拠になっているのかなどを正しく伝えなければいけない(これが間違えていたりするとしばしば炎上する)。
    • 聞き手に納得してもらうためにその部分の(筆者が考える)論理構造を読み取り、伝えることは自分の論理的思考力を伸ばす練習になるはずです。
  • 各種実験の強み、特徴を理解するために行う
    • ある分野の研究では必ずこれについて調べる、という文化()がしばしば見られたりします。
    • あるいはこれについて調べるときは必ずこの手法を使う、というケースもあったりします。
    • そういうわけで、自主的に実験計画を立てるときにどんなデータが必要なのかを知るのに役立ちます。
    • 類似の実験手法がある中でこれを選ぶメリットはなにか(精度の良さ、簡便さなど)を理解することで、自分の研究にも活かすことができます。

論文紹介を完遂するまで

論文紹介を終えるまでの流れをたどりながら、ある意味ハウツー的なものを書いていきたいと思います。
論文紹介を実際にやるとなったとき、やらなければならないことは以下のものに分けることができるでしょう。

  • 発表する論文を探す
  • 論文を読む
  • 発表資料・配布資料を作る
  • ゼミなどで発表する

この流れに沿って書いていきます。


発表する論文を探す

探し方もいくつかあると思います。思いついたものを挙げてみます。

  • 最近読んだ論文で面白かったものを発表する
    • これは論文紹介のために探しているとは言わないですが…。
    • 本来あるべき姿はこうなんだと思いますが、私は意識が低いのでなかなかこれができない…。
  • 雑誌から探す
    • よくやる方法です。自分が発表したい分野のジャーナルを最新号から遡っていき、興味がある記事を探すという方法になります。
    • メリットとして、発表に適した論文を見つけやすいというのがあります。うちのラボでは発表論文のIFや発行時期、分野に多少条件が設けられているので、これらをクリアした論文を短時間で見つけたいときに役立ちます。
    • まあ、知っているジャーナルから探すことになるのでマンネリといえばマンネリになりますが。はじめのうちはこの方法が一番いいんじゃないかな。
  • キーワードから探す
    • PubMedやGoogleScoLarのような検索エンジンを使って探す方法。
    • 発表したい分野がある程度細かく決まっていてキーワードから探せるようなときは良い方法だと思います。例えば食虫植物の生態について話したい!というときはキーワードから探したほうが圧倒的にヒット率は高いでしょう。
    • デメリットとして有象無象の論文が引っかかるので、それを精査するのがだるいです。ある程度論文を読み慣れていないと玉石混淆から玉を探すのは大変そう。
  • 話題の論文から探す(新聞やニュースサイトなど)
    • 例えば国内の大学で論文が出ると新聞記事になったりします。そういったニュースで興味があったものについて原著を探すという方法です。
    • そこそこ話題になった論文を紹介したいときには便利です。
    • 国内のニュースの場合、一般向けに簡単な解説が既に加えられていることも多いので、それを参考にして発表できるというメリットもあります。
    • 最近は面白い論文をピックアップしてくれるツイッターアカウントなどもあるので、そういった発信者を普段から見ておくことでこれだ!というものを見つけやすくなります。
  • 特定の研究室・研究者の出した論文から探す
    • 既に知り合いの研究室・研究者がいる人におすすめの方法です。顔本とかで知り合いがアクセプトされた!と言っている論文を紹介するというものです。
    • 似たやり方として、学会で面白いテーマの発表をしていたラボを控えておき、そこが出している最新論文を紹介するというのもあります。

論文を探すときの注意点として、研究室で論文紹介に何かしらルールが課せられている場合それを守る、というのがあります。
こういうルールはしばしば明文化されていないことも多いので、一度先輩に聞いてみると良いです。ラボによって(ラボの論文紹介の目的によって)違うので…。
例として自分のラボを挙げてみます(身バレが怖い)。
まず自分たちの分野とあまりにも遠い論文は実質タブーの空気があります。まあ、バイオ系のラボなのに橋の建築に関する論文を紹介してもみんな反応に困る。
また、ウェット系の研究室ということもありドライ系の論文はそこまでウケません。手法開発的な論文もあまりウケない気がします。
他にそこそこ新しい論文であること、IFがそこそこ高い論文であることというルールもあります。つまり昔の論文ですごく引用されているレジェンド的なものを紹介したい!と思ってもそれはできません。
このルールによって、情報が古い論文の排除と、内容がハズレの論文の排除が行えている(ようです)。
また、発表形式によってもある程度排除される論文が出てくると思います。発表時間が固定されている場合はあまりにボリューミーな論文はまとめきるのが難しくなってしまう、など。
以上のようなルールを加味しつつ、自分の目的にあった探し方をしていきます。



論文を読む

論文を決めたら、ある程度最終的な目標を意識しつつ読んでいきます。私が意識している目標は

  • 論文の新規性・重要な点を理解し説明できるようになる
  • 類似研究、先行研究との位置関係を理解する
  • この論文の論理構造を理解し、筆者の代わりに説明できるようにする

といったところです。
まるでこんなこと書くと真面目っぽいですが、別にこれをガチガチに意識しているわけではないです。
ある程度目的が決まっていると読みやすいということで。いかんせん発表しなければいけないため、通常の論文読みよりも上記のようなことに重点をおいています。



もうちょっと具体的な目標、todoにするとこんな感じ。

  • わからない単語、用語を調べておく
  • 論文で紹介されたデータにサプリ含め目を通しておく
  • 論文で紹介されたデータの意味を理解する
    • どんな実験を行っているのか、なぜこのデータからこの結論が導けるのか、グラフの縦軸・横軸の意味、有意差検定の妥当性などなど…
  • 各データ、実験の分類・重み付けをできるようにする
    • 例えば、この論文では8つの実験をしているが、うちAを明らかにするために3つの実験を行い、Bを明らかにするために…と内容によって大きく実験を分類できるようにする。
    • また、とりあえず確認のためにちょろっとやった実験と、主張の決め手となった実験なら後者のほうが重いというように重要度を区別できるようにします。
    • 軽い実験をやたら頑張って説明してもあんまり意味ないし。
  • 実験手法の意味合い・原理を理解する
    • なぜこの手法を使ったのか、特に類似手法が多い場合はおそらく理由があるので説明できるようにしておくと良いです。

そして、これらの目標をクリアするために論文を読んでいきます。
私は英語が未だに泣くほど苦手なので、最近は全文をグーグル翻訳に突っ込むという荒業読みをしています。
しばしば誤訳が出るのですが、それに気をつければ便利です。人によっては自力で全訳して読んでるツワモノもいます。
もちろん英語に強ければそのまま読めばいい。英語に強い人の気持ちはわからないのでそのへんはうまく言えません。



また、困ったときにはいろいろ参考にしています。例えば

  • 筆者が所属する研究室の発表物・HPを探す
  • 同研究室から出ている過去文献を読む
  • その論文のプレスリリースを探す
  • 参考文献を読む
  • 企業のHPの実験手法に関するページを探す
  • 先輩や先生に泣きつく

といった感じですね。



まず、研究分野の大まかな理解をしたいときに役立つのが研究室のHPを探すことです。
なぜなら研究室HPには大抵、そこでやっている研究テーマの説明や書いた論文リストがあるためです(ないところもある)。
ラボのページにはラボ特有の実験プロトコルが説明されている場合もあります。
ラボのHPを探す際はラストオーサーの名前と大学名でググるのがいいと思います。



また、特に日本の研究室から出た論文の場合、大学側が一般向けのプレスリリースを出しているので、それを読めば大枠の理解が進みます。
プレスリリースは比較的易しく書かれていますし、論文の実験から何が言えるのか、今後の展望は、といった要点を日本語で説明している事が多いからです。



もちろん引用文献を読むのも大切です。が、闇雲に読むと時間がなくなって死んでしまうので、はじめのうちはあえて論文に当たる必要はないと思っています。引用論文を読むようなときというのは

  • 実験手法が研究室特有の場合
    • マテメソ部分に引用文献が書いてある
  • 前の論文の続きをしている論文の場合
    • イントロなどに同じラストオーサーで前の論文が引用されている
  • 分野の背景をより詳しく知りたい場合
    • イントロやディスカッションで説明した部分で引用されている

くらいでしょうか。
また、引用文献を読むときも精読する必要はもちろんなく、どこを知りたいかによってピンポイントで読んでいけばいいです。
例えば実験手法ならマテメソに書いてあれば他のところを注力して読む必要はないということです。
私はここでもグーグル翻訳の恩恵を受けまくっています。



一般的な実験手法について詳しく知りたいときは大学の教科書や企業のHPが役立ちます。
実験機器のメーカーは実験原理について実用的な面から解説していることが多いです。ググって出てきたページを適当に読めばいいでしょう。もし発表で実験手法の説明をするならばHPの内容を引用するのも手です。



そして(ここは特にラボによると思うが)わからなくなったら周囲の人や先生に聞いてしまったほうが良いです。
特に読み慣れていないときはさっさと聞いたほうが時間的に、また他人がどうやって論文を読み解くかがわかるという意味でメリットが大きいです。相談しながら解決の糸口が見つかることも多々あります。



発表資料・配布資料を作る

ある程度読み込めてきたら(100%ではないはず)、発表用の資料を作っていくことになります。
これもラボによってかなりやり方は違うはずです。レジュメをしっかり配布する必要があるところもあれば、ほぼスライドショーだけでOKというところもあるでしょう。



配布資料を作る場合、論文タイトル、発行日、著者名、DOI、各図表あたりを入れることになるでしょうか。資料を受け取った側が、この論文をより詳しく読んでみたいと思ったときに元論文に当たることができるようにしておくと良いと思います。
あと、資料を見れば何となく要点がつかめるようにしておくとより良いです。まとめスライドを作っている場合はそれを入れておくのも手。



スライドを作るときは、原則論文形式と同じような流れで作っておけば問題ないです。
私は論文のプロフィール(著者名やDOIなど)→論文の概要一枚→イントロダクション→この論文の目的→リザルト→リザルトのまとめ→ディスカッション という順番で作っています。 
まずは各スライドタイトルに書きたいことをどんどん一言メモしていき、とりあえずどこに何枚使うかをある程度可視化しておきます。
なお、この際、リザルト→ディスカッション→イントロダクションの順でやっていくことをおすすめします。なぜならディスカッションやイントロダクションはいくらでも掘り下げようがあり、時間泥棒になりがちだから。



スライドに載せる図表ですが、論文の元サイトからppt形式や画像形式でDLできることがほとんどなので、それを使うようにします。

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赤矢印のように、図の近くにDL用リンクがある場合が多い。
サプリなどはpdfでしか見られないことも多いので、そういった場合はスクショしてます。拡大表示に耐えうる画質になっているかを確認しつつ…。
しばしばいろんな図が集まって一つの図とされていることがありますが、発表するときには必要な部分だけをトリミングして示せばいいでしょう。パワポには図のトリミング機能があるのでそれを使えば簡単です。


発表時間が決まっている場合、なんでもかんでも全部説明できないと思うので、質疑用にサブスライドを作っておき、必要に応じて見せるといいでしょう(作る余裕があれば)。
やたらと情報を提示しすぎると聞き手がパンクしてしまうこともあるので、ある程度情報を絞ります。



その他スライド作りは優秀な指南記事が多いと思うのでいろいろ見てみてください。いろいろ流派もあるのでいろんな意見に触れるべきです。
tsutawarudesign.com
「ある学生さんのスライド」を考える|研究成果をもっと伝える プレゼンテーション スライド作成講座|実験医学online:羊土社

こういうのをみると自分のスライドのクソ雑魚さが身に沁みていいですね!



ここも掘り下げすぎると時間泥棒になるので締切との兼ね合いをしつつ。
個人的には色を使いすぎない(パレットにある色だけで基本まかなう)こと、英文と和文規定フォントを設定しておくこと(特に英文フォントは斜体に専用文字があるものにする)を気にすればいいんじゃないかと思います。
ちなみに私の気に入っているフォント設定は英文:SegoeUI、和文メイリオです。超普通~~~。
自分のパソコン以外で使ってもまず入っているし、SegoeUIの斜体フォントは結構キレイです。

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使っているフォントとカラーパレットの設定


ゼミなどで発表する

準備が終わったらいよいよ発表です。特にこれといってないですが、

  • 図の説明を丁寧に行う
    • 特にグラフの軸の意味などは説明を忘れがちですが、聞き手は意外とついてこれなくなったりする
  • 今喋っていることは自分の意見か、筆者の意見か、論文の実験結果か、一般論か…など意見の出処をはっきりさせる

というのは他の発表よりも意識するようにしています。
一般的な発表スタイルについてはこれも優秀な指南記事がいっぱいあると思います。本もいろいろあるし。




おわりに

これで初心者でもバリバリ完璧な論文紹介ができる!…っていうものではないので、炎上しても責任は取れませんが。
私もまだ試行錯誤して本番でボヤを起こしている状態なので、まあダメな学生はこういうことを考えてやっている、という一つの参考として、自分でもいろいろやってみてください。
こいつ全然論文紹介をわかってねえな!と思った人は、ぜひ私を含めた迷える子羊に向けて指南記事を書いてください!!よろしくね!!!